わんわん帝國 ヲチ藩国

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イベント14 食糧増産 2007/01/13 04:00


《食糧増産》
ヲチ藩国では食糧生産において次の試みを行い、
大きな収穫を得る事に成功しております。
各文族たちの報告をご覧下さい。



画像
〈食糧生産地〉



〈農地拡張〉written by liang

帝國本国からの食糧増産命令を受け、ヲチ藩国は計画の一つとして農作物の増産を目指し、その実現に向けて取り掛かった。
東平原の開墾は、その計画の中心プロジェクトの第一段階で、現在の農地の東側を新たに開墾し、耕作面積を増加させる計画である。
その計画には、陸軍施設工兵隊の参加が決定している。
その頃のヲチ藩国は、戦時体制に移行しているため、藩王と摂政は王都にある執政府に、執政は万一に備え藩国防軍司令部にそれぞれ詰めており、指揮を執っていた。
また、odと戸裏 永流を含む吏族たちは膨大な量になった事務作業に追われ、技族である秋雪は並行して推進されている農耕機械の開発プロジェクトに従事していた。
そこで、開墾計画に従事することになったのが、厄介ごとの火消し人である大族の石動乃衣と、なぜか文族のliangだった。
そして、石動を隊長にした工兵隊が派遣されて、しばらくたった頃。
今回はかなり大事のようだな。
liangは工兵隊のI=Dで、邪魔な大岩をどかしながらそう考えていた。
なにせ、あのヲチ藩王が真面目に仕事をしてるんだ、相当にまずい状況に違いない。
事実、戦時体制に移行して以来、サボり魔で摂政GULEの頭痛(と胃痛)の種であった藩王ヲチが、執務室に篭り、休みなしで業務に当たっているのだ。
藩王は、「少しは休憩を取って下さい。」と、何時もと反対の事を言う摂政に、「今迄俺が、何の為に昼寝をしてきたと思ってるんだ。こんな時に備えて寝溜めしといたんだろうが。」と嘯いていると言う。
岩を、瓦礫を集積している場所まで運ぶと、ちょっとした山が出来上がっていた。
このあたりの平原は、岩などを多く含んでおり、本来は耕作地として向いている土地ではなかったが、それでも他の土地に比べればまだましなほうであり、先人達は苦心してこういった土地を開墾していったのである。
liangは、今のような重機を持たない時代の、先人達の苦労を偲びつつ、
指揮を執る石動に連絡を入れた。
「I=D隊より指揮所へ。D−3地区の瓦礫処理、終了しました。」
「指揮所よりI=D隊へ。お疲れさん、次はD−4地区だ。早速だけど向かってくれるかい。」
石動の指示に、liangは、朝から働きづめの隊員達の疲労を考え、提案した。
「I=D隊より指揮所へ。了解、しかし、せめて隊の半分でもいいので、休憩を取らせたいのですが。」
「悪いが、それは許可できない。今日中にD区全体の処理を終わらせなければならない。休みを取らせる余裕は無い。」
珍しく、真剣な様子の石動の返答。
そうというのも現在、計画の進捗状況は、瓦礫処理に手間取り遅れがちになっていた。
それを聞いて、石動さんも大変だな、と思いながら通信を返す。
「I=D隊、了解。これよりD−4地区に向かう。」
「すまない。」
これまた珍しい、石動の侘びの言葉を聞きながら通信を切る。
全く、この藩国は藩王といい石動さんといい、状況が切羽詰ってくると真面目になる人ばかりだ。
こちらも、もう一仕事だな。
「聞いての通りだ。D−4地区に向かう。」
隊員達にそう声をかけると、
「マジっすか?」「昼飯ぐらい食わせろよ!」「隊長、物分りよすぎ。」「質問です。石動指令とliang隊長がデキているという噂は本当ですか?」など、口々に不満(1名ほど質問)を述べる隊員達。
「不満は、帰ってから聞いてやる。さっさと済ませてとっとと帰るぞ。それから、最後に変な質問をした奴。後で俺のところに出頭しろ。」
不満を言う元気があるうちは、大丈夫だよな。
そう思いつつ、意味不明な質問をしてきた隊員を締め上げることにした。
「ええ!?なんでですか?」
うろたえた様子の隊員(どうやら、若い女性らしい)
「その噂の出所を教えてもらう。ちなみに質問の答えだが、一切合財根も葉もない問答無用な大嘘だ!!」
何処のどいつだ、そんな戯けた噂を流した奴は。見つけたら、絶対に射殺してやる。
「え〜と、確か戸裏さんが、最近お二人とも妙に仲が良さそうだから、なんかあるんじゃないかと仰ってましたし…」
しどろもどろになりながら答える隊員。
戸裏さんか!全く、いったい自分をどんな目で見てるんだ。しかし、敏腕吏族の戸裏さんを射殺するわけにはいかんよなあ…
「それに、この間、石動指令に伺ったら、意味深に微笑むばかりでお答え頂けませんでしたし…」
「石動!ちゃんと否定しとけ!」
思わず、この場にいない石動に対して突っ込みを入れてしまうliangだった。
「ククク…」「ぶははは!」「あっはっはっは!」
そんな所で、このやり取りを聞いていたほかの隊員達から失笑がもれる。
「…もう出頭はせんでいい。今後その噂をする奴がいたらちゃんと否定するように。」
隊員達の笑い声を聞きながら、盛大にため息をつくliang。
石動さんめ…ちょっと見直したかと思えばすぐこれだ!
でも、さすがに石動さんも射殺するわけにはなあ…
しかし、こいつら其処まで笑わんでもいいじゃないか、今日は全員ぶっ倒れるまでこき使っちゃる。
liangはそんな事を考えながら、あらためて「いくぞ」と指示を出す。
この事業は藩国の行く末を左右する重要なプロジェクトだ。
これが成功すれば、困窮する国庫も一息つけるかもしれない。
帝國のため、そして我らが藩国のため、何としてでも成功させよう。
それが、この藩国に属するものたちの総意であった。


〈農業の効率化〉written by 砺波 一哉

戦争が激しくなるにつれて真っ先に必要なものがある。
それは食料。人間、どれだけ気合があり目をぐるぐるさせ火事場のクソ力でハイテンションになったとしても(決してこのアイドレスに参加している多数の人たちを指しているわけではない、ええ、勿論♪)食べるものを食べなければ死んでしまうのだ。
お世辞にも大国とは言えない、むしろ弱小藩国と名乗る方がしっくりきてしまうヲチ藩国においていまや食糧問題は最重要課題であり、胃潰瘍間近の摂政GULEは悩みすぎで5円ハゲが出来たと巷では噂になるほどであった。
さて、ヲチ藩国は農業については小麦の栽培に力を入れており、収穫期に実りの丘から見下ろす小麦畑は黄金の草原を髣髴とさせちょっとした観光名所になっているほどである。農業の規模としては最大である小麦に注目し、食糧問題を解決する一つの案としてこの小麦の栽培を更に発展、改良し生産量を高めようということになった。
農業を発展させる方法はそれ程多くは無い。最初に考え付くのは畑を純粋に増やす事。次に、作業の効率化、作物の品種改良、農薬や肥料の改良などである。藩国としての方針はまず、農耕地を増やす事から始まった。陸軍から人員を割き瞬く間に畑が広がっていき、本来農耕地である区画の東側に広大な開墾地が誕生した。
さて、畑が増えたのだから作物を増やす事が出来るのだが一人の人間が働ける限界というのは確実に存在する。畑が広くなりすぎて人手が追いつかなくなるのだ。嬉しい悲鳴といえるかもしれないが食料が増えなければ全く意味は無い。
人が足りなければどうすればいいだろう?
「知恵」を使えばいいのだ。

プロジェクトK 〜小麦畑に懸けた男たち〜

藩国内のとある工場。そこの会議室に数人の男たちが何やら熱く議論を交わしていた。
「だから!その設計だと足回りに負荷がかかりすぎるだろう!」
「しかし、大規模な農耕地を賄うには小型のものでは意味が無いだろう。」
あーでもない、こーでもないと次々と案が出され却下されていく。あまりの激しさにしまいには取っ組み合いの大乱闘となり、2名ほどの頬に拳の跡がくっきり残る騒ぎとなった(ちなみに、この時の跡はクロスカウンターによる相打ちの跡である)。
彼らが行っているのは新型農業用機械の開発。その中でも、耕起を目的とした農耕用トラクターの改良が彼らの研究テーマであった。現在も農耕用トラクターは使用されているのだが、故障率が高く、また出力があまり高くないのが現状であった。これらの問題点を解決し、一人当たりの労働力を向上させる事が彼らの目標である。

彼らは焦っていた。始めに設定していた予定から既に10日も遅れていたのだ。ヲチ藩国はファインセラミックを扱った電子部品の材料を製造する技術に特化している国であり、輸送用機械である自動車や航空機のエンジンなどの技術も高い水準を誇っているがそれらの本体である車体や足回り、タイヤ等に関する技術や知識はまだまだ発展途上であった。今まで扱ってきた技術とは違う未開拓の分野への挑戦は難航に難航を極めた。特に問題となったのは耕起用であるにも拘らずパワーが足りないため満足に土を耕す事が出来ない事だった。彼らは悩みに悩んだ。ストレス無くパワーを伝えるための機構、運転者の立場にたっての操縦方法の簡易化。数え上げればきりが無いほどの問題点が沸いて出てくる。しかし、彼らは決して諦めなかった。
そう、彼等には夢があった。誰も彼もが笑顔でお腹いっぱいご飯を食べられる日が来るという些細な夢だ。些細だが、何よりも輝かしい夢であり、彼らはそのための仕事についていることが何よりの誇りであった。
「軍人だけが戦争をしているわけじゃない。私達も戦争という時代に負けないように戦っているんだ。」
彼らはいつも声を揃えてそう言っていた。

そうやって数々の苦難を乗り越え、最後の問題点であったタイヤの剛性をクリアしたのは最初に設定していた納期の早朝だった。誰も彼もが床に突っ伏して寝ている。汗と泥とオイル塗れにもかかわらず、彼らの顔は皆一様に幸せな笑みを浮かべていた。
その中で研究員のリーダーである男が外で煙草を吸っていた。その傍らには摂政であるGULEの姿。
「まったく、厄介な仕事を持ってきやがって。大体予定期間が短すぎる。」
無精ひげだらけで髪もぼさぼさなその男の悪態にGULEは苦笑した。
「いやいや、すまなかった。本当に切羽詰っていてな。お前しか出来ないと思ったんだ。」
「褒めても何もでやしねえよ。しかし…」
素っ気無く答えるとまた煙草に火をつける。肺から搾り出されるように紫煙が吐き出され朝靄の中へと消えていく。そっと彼は呟く。
「悪くない仕事だった。俺たちがやるべき仕事ってのはああいうものを言うんだな。」
そう呟く彼の表情は、まさに満更でもないという顔だった。

数日後、開拓された畑で彼らが開発した新型トラクターがえっさほっさと働いていた。彼らの仕事はこれで終わりではない。夢を追い求め、彼らは今日も進んでいくのだろう。



〈農作物の品種改良〉written by liang

ヲチ藩国の王都にある、王立シーザス学園を中心としたシーザス学術研究特区、ここでは昔から藩国の技術開発の中心として機能していた。
その中でも、シーザス学園の農業新品種研究チームの第1班は、以前から研究が進められていたヲチ藩国の特産品であるみかんの増産を目指し、寒冷地に適したみかんの開発を促進させる事にした。
元々、みかんは温暖な気候の作物であり、寒いヲチ藩国には適していない。
しかし、なぜか伝統的にみかんを好む此処の国民達は、その歴史の中で品種改良を繰り返してきた。
そんな先人達の努力のおかげで、現在の国民達は、国産のみかんを食すことが出来るのである。
しかし、現在でも生産できみかんの品種と収穫量は限られており、国産みかんは高級食材となっている。
そんな中、第1班は、「全ての国民に、国産みかんを!」を合言葉に、第1班は研究を進めていた。
当初、すでにそれなりに寒さに強い品種(A種とする)と成長の早い品種(B種)は存在しており、これ等をかけあわせることで、新品種は比較的短期間で完成するものと見られていた。
だが、第1班の目論見ははずれた。
どんなに試しても、欠点を補うどころか、本来持っていた耐性まで打ち消しあってしまい、寒さに強く成長も早いが、収穫までに枯れてしまうという、脆弱なものにしかならなかったのだ。
これを解決するために、遺伝子の組み換えを試したが、こちらも失敗した。
味が恐ろしく悪く、刑罰意外に使えないとしか考えられないもの。
とてつもなく皮がぶ厚く頑丈で、包丁どころか鉈ですら切るのが困難なもの。
など、新種ならぬ珍種ばかり出来上がる結果となった。
結局、新しく出来たC種と他の病気・害虫に強い品種を、更に交配を重ねることにより、目的の品種を作り出すことに決定した。
正攻法ともいえるこの方法は、着実に成果を上げ、夢の実現まで後一歩にまで迫るまで研究が進んだ頃、ヲチ藩王と王犬いよのが学園の視察に訪れた。
その日、ヲチ藩王が案内役の研究員に質問したときのこと。
「此処の班は、何を研究しているんだ?」
「はい、藩王閣下。我が第1班は、新品種のみかんの開発を行っております。」
「ほ〜、みかんね。良いんじゃない、俺もみかん好きだし。なあ、いよの。」
藩王の傍らでお座りしている、王犬いよのに声をかける。
「わう?」
突然、話を振られたいよのは、妙な吠え方をして小首を傾げた。
「おいおい、聞いてなかったのか?お前も好きな、みかんの話だぞ。」
「わう!」
今度は、元気よく吠えて返事をし、尻尾を振っている。
「いや、だれも食わせてやるとは言ってないけどな。だいたいまだ収穫の季節じゃないだろ。」
その藩王の言葉に対し、
「わう〜」
いよのは、情けない吠え声を上げると、しっぽもしおしおとたれていく。
「おいおい、なにもそこまでがっかりせんでも…」
そんな藩王と王犬のほのぼのとしたやり取りを見物していた研究員は、
「我々の研究が完成した暁には、我が藩国のみかん生産量は飛躍的に伸びるはずです。そうなれば、きっと毎日でも国産みかんを食せる様になるでしょう。」
「本当か!?」「わうわう!!」
その言葉にやたらと食いつく藩王と王犬。
「はい、もちろんです、藩王閣下。それに、新品種の完成まで後一歩のところまで来ています。」
自信たっぷりに答える研究員。
藩王は、その言葉に満足そうに頷くと、研究員の肩をたたいた。
「うんうん、頑張ってくれよ、期待してるから。」
そう声をかけると、いまだみかんに執着しているらしい王犬いよのを促すと、学園を後にした。(みかんを食べられなかった王犬いよのは、最後までしおしお尻尾だった)
それから数ヵ月後…
ヲチ藩国は戦時体制下にあり、来るべき開戦に備え、準備を進めつつあった。
万一に備え、執政府ではなく、藩国軍司令部で執務を行う砺波一哉のもとに、みかんを山ほど抱えたヲチ藩王が突然訪れた。
「藩王閣下、どうされたんですか。」
まさか、サボり癖が出たんじゃないだろうなと、内心不安になりつつ砺波が尋ねる、
「よお!お疲れさん。激務に励む、執政砺波閣下とスタッフ達に差し入れを持ってきた。みんなで食ってくれ。」
この言葉に、近くにいた司令部要員達から歓声が上がる。
「こいつは、シーザスの研究班が作った新品種だ。寒冷地に完全に適応してるんだと。こいつが広がれば、もっとたくさんのみかんが安く生産できる様になるらしいぞ。」
まるで、我が事の様に心底嬉しそうな藩王は、
「全く凄い奴等だよな。俺も負けてられん。じゃ、仕事が残ってるんで、またな。」
そう言い残して去っていった。
藩王、あの様子じゃ、いろんな所でみかん配ってるな。
残された砺波はみかんの山を眺めながら、国民の努力と成果を心の底から賞賛し喜ぶ藩王の気概を感じ、知らぬうちに笑みがこぼれていた。
「よし、みんな、小休止にしよう。」
みかん目当てに、砺波の周りに集まるスタッフ達に砺波は、
「はいはい、みかん配るから、ちゃんと並ぶように。」
と指示する、行儀良く並んでみかんを受け取るスタッフ達の姿に、さすがわんわん帝國の国民だなと、感心した。
そして、全員に行渡ったのを確認すると、最後に残った一番小さいみかんを手に取り、皮を剥いて一房頬張る。
みかんは、実に甘く見事な味だった。これを食べ終わったら、また頑張らないとな。
仲良くみかんを頬張るスタッフ達を見やり、藩国を思う幾多の国民のため、決意を新たにする砺波だった。



〈海洋資源の活用〉written by od

ヲチ藩国漁業公社の収穫船は、いまやフル稼働していた。
冬の海を行く収穫船のレーダーに感が入る。もともとは軍用だったトポロジーレーダーを魚群探知用に転用したそれは、機動の微妙な違いを聴き分けては、ただの波頭と魚群とを確実に選り分ける性能を持っていた。
探知点に到達した収穫船がチューブを海面に降ろすと、ニシンが船倉になだれ込む。
いまごろは他の収穫船も、続々と作業を始めているはずである。船長は通信回線を開くと、収穫船団全隻に向けてメッセージを送った。
「こちら1番船、ニシン1t確保。そちらの首尾はどうか。オクレ」
「こちら2番船、サバ1t確保、品質は上々。オクレ」
2番船の返答は、ジュウジュウと魚が焼ける音のBGM付きだった。あの野郎、早速食ってやがるなと、1番船の船長は2番船船長のエビス顔を思い出す。
「こちら3番船、サンマ1t確保。2番船は、帰るころには500kgになってるんじゃないか? オクレ」
3番船から、呆れ声の返答が届く。こちらは、魚の焼ける音はない。
どうやら、全隻収穫目標は達成できたようだった。
「こちら2番船。3番船、サンマの塩焼きは美味いか? オクレ」と2番船。
「こちら3番船。せっかくの採れたてを刺身にしないバカがいるか。脂の乗りは最高、オクレ」
1番船の船長は、やれやれと肩をすくめる。いちいち食べないと味がわからないようではな、と後輩たちもまだまだだと思った。それでは目利きとはいえない。そう、いい魚は食べなくてもおろせばその価値がわかる。船長は通信回線を切ると、包丁をぬぐって棚に収めた。おろした感触では、今日のニシンは最高の身質。それを酢に漬け込む。港に帰るころには、すばらしいマリネが出来上がっているはずだった。

一方そのころ、かんづめ工場も負けずにフル稼働していた。
収穫船から運び込まれたサバやニシンをおろしては、大型のスチーム釜を用いて一気に炊き上げる。ハーブと一緒に煮込まれて骨までやわらかくなった魚は、次々に缶に詰め込まれた。身は身、頭は頭で別の缶である。目玉の周りや頭肉を楽しめる頭の缶詰は、ヲチ藩国ほどには魚を食い慣れぬ輸出市場を尻目に、もっぱら国内で消費される通好みの一品であった。他国で海の幸に恵まれたところでも、事情は似たようなものであろうと思われたが、不思議と国外に宣伝しようという動きはどこにもなかった。食えない奴に無理に勧めて、自分の食う分が減ったら困るという暗黙の了解であろう。
熟成待ちだった醗酵ニシン缶の在庫は、一旦開けられた後練り直しを経て蒸しあげられ、パテとして生まれ変わった。なんともったいないことを、という声もあったが、輸送中に爆発したら大惨事であるとのことで結局そうなった。たしかに、輸送船内部で破裂したらちょっとしたBCテロである。出来上がったニシンパテはほのかな酸味と醗酵の旨味が絶妙の逸品であった。試作品を食べた某メーカー開発室の面々は、戦時増産のみで終わらせるのも惜しい味だ、と言い合ったものである。

さらに一方そのころ、かまぼこ工場もまたフル稼働であった。
そもそもこの年、養殖鯛は余りに余っていた。採れすぎたのである。より正確には、大きすぎた。放流した稚魚が損失予想を大きく超えてみな無事に育ったこともさることながら、その年はどれもこれもことのほか発育順調であった。80cm、90cm級がごろごろ採れ、1m越えすら決して珍しいものではなかった。養殖業者たちが、その年特段変わったことをしたわけでもない。いつもどおりに餌をやり、いつもどおりに何くれとなく世話を焼いた。その結果が、これである。後世においても、この年にここまでの大物ぞろいとなった理由は謎のままであった。
さて、その結果どうなったか。鯛は市場でだぶつきにだぶついた。大物の需要は確かにあるが、そればかりが求められているわけでもない。80cmの鯛を一尾買っていって、何日かけて食いきるというのか。藩国内外の胃袋にも、大きさの限界というものがある。その限界に達するほどの、すさまじい豊漁であった。
「今日も鯛めし、明日も鯛めし、これじゃ年がら年中鯛めし……」とは、この年流行った戯れ歌である。豪勢な話であった。
藩国民が丹精して育てた鯛の行く末に心を痛めていた漁業公社の吏族たちは、いささか不謹慎ながらも戦時食料増産の報に一時沸き返った。出荷のあてもなく冷凍庫を埋めていた鯛は、ここで日の目を見ることになったのである。
もちろん品質には絶対の自信がある。できれば刺身など、素材をそのまま味わって頂きたいというのが本音ではあった。が、戦地に生魚と包丁を抱えていくわけにも行くまい。鯛は急遽かまぼこに加工されることに決定した。それならば固形で食べやすく、パックにすれば日持ちも利く。糧食としては悪いものではなかった。本来高級贈答品としてほそぼそと生産されてきた鯛かまぼこであったが、この年は記録的な生産量をマークすることになる。
身を取ったあとに残った骨や頭は、じりじりと煎り上げられた上で塩と一緒に粉に挽かれた。沸かした湯を注げばスープに早変わりという寸法である。

さらにもうひとつの一方そのころ。
みかんを配り終えたヲチ藩王は、城内の秘密基地でお昼寝中。
「むにゃむにゃ、もう食べられない……」
食いしん坊国際A級ライセンスな寝言であった。

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